途中の一歩【雫井脩介】の感想

雫井脩介 途中の一歩

雫井脩介さんとの出会いは去年。ドラマ「火の粉」の原作小説。隣人役の俳優さんの不気味な演技が光り引き込まれる。

全てにこだわりが強くバウムクーヘンを焼く棒も自宅に完備。本格的なバウムクーヘンを焼いてトナリの主人公宅へと届ける。

テレビでスイーツを見るとスグ食べたくなるのが常。「火の粉」の場合は別。こんなの全然食べたくならないよ~。不気味すぎ~。バウムクーヘンへの風評被害だぁ~。

そんなドキドキと不気味さが続く中オドロキの結末へ・・・って結末忘れちゃったぁ~。

よっしゃ~。いいぞいいぞ。そんなコトだろうと思ってた~。

「火の粉」を見終わった一昨年。早速ネットで雫井脩介さんの本を何冊か購入。既に見ちゃった「火の粉」も購入。どうせ何でもスグ忘れちゃう私。読む頃には新しい作品のように読めるだろ。早くも読み頃。

雫井脩介さんの本は「犯罪小説家」「仮面同窓会」と読了。3冊目。レビュー記事ではないですけどコチラの記事で説明してます。

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感想 起 のどかな合コン風景

主人公は漫画家。人気漫画家だった兄のアシスタント時代、兄がバイク事故で負傷。漫画を書けなくなった兄の連載中のヒット漫画を受け継ぐことに。部数を伸ばし大ヒットで終わるがその後なかなかヒット作に恵まれず。

・・・ピンときたぞ~。兄の事故怪しすぎ~。過去の事故は必ず事件。

主人公と連れが合コンに行く。お相手は担当編集者とその友人。

好みの女性のタイプを聞かれ忖度なしの言いたい放題の男性陣。怒り爆発の女性陣。のどかな風景どすなぁ。

怒れ~。怒れ~。生きてるからこそ怒れる。のどかな日常がどんな風に変貌するのか。凄惨なドロドロの未来になるとも知らずに合コン楽しんでね~。

感想 承 驚愕の展開

・・・そろそろ死体が欲しい頃だな。

昔。友人から譲り受けたアガサ・クリスティ。読み進めど読み進めど殺人事件が起こらない。ついに何事もなく読了。クリスティの数少ないドラマ作品だった。

ミステリーに恋愛をぶっこんでくるクリスティなので最後まで「まさか」という思いで信じ続けた。かなりのトラウマ。

ミステリーの読み始めはいつもピリピリ。殺人が起こるまで落ち着かない。

・・・のんきすぎる。とてもいや~な雰囲気に満ち溢れてる。あまりにどーでもいい情報ばかりだ。

裏面のあらすじ確認。

・・・・・・・・・。

まさかの恋愛小説? しかも6人の物語って・・・男女6人恋物語かい~~!!

えっと。6人って誰? ざっと7人いるんスけど。男女7人恋物語の方がしっくりくるし。

ハナシを整理しよう。

硬派で仕事一筋だった主人公と愉快な仲間たち。ある合コンをきっかけにどんどん合コンに、いや婚活にハマってゆく。

合コン相手の女性陣には必ずコードネームがついている模様。言うに及ばず合コンの成果は読めてしまうが楽しく面白い。

それにしても男性陣よ。女性陣がコードネームで呼ばれてるのなら自分たちもコードネームで呼ばれてる可能性に気づけ!!

そんなだから”銀河系軍団”に3分クッキングされちゃうんだよ~。

一方、制作会社勤務の女性。友人の結婚式である女性と出会う。男性のメアド獲得に積極的なその女性に「ヌエの恋愛塾」なるサイトを紹介される。触発された彼女も積極的に合コンに参加し始める。

ヌエとは誰か?

ってか登場人物見渡したら一人しかいないし。”銀河系軍団”の鮮やかすぎる手際も「ヌエの恋愛塾」出身としか思えないがどうかな?

・・・最初に「主人公の兄の事故は事件だぁ~。」ってハズしまくったので大人しくしていよう。

ミステリでも犯人をあまり隠そうとしない作家。東川篤哉さんみたいなユーモアミステリっぽい軽妙なタッチで進んでゆく。

ふむ。バラバラだった登場人物たちが無理なく出会い無理なく一本の道に収斂されてゆく。ストーリーテラーの真骨頂。

感想 転 寄り道(ネタバレあり)

ソフトなネタバレあります。ご注意ください。

作中の漫画

本筋の恋愛小説以外にも楽しめるのが漫画。

主人公、女性漫画家、後輩漫画家と3人の漫画家が登場。それぞれの漫画の内容が描かれている。連載漫画の概要も良く出来ていて本当にありそうでオモシロイ。

マンガ業界のアレヤコレヤがすごくリアル。病気休載ばかりしている後輩漫画家とか思い浮かんじゃう~。ギョーカイネタも楽しみのひとつ。

主人公の書いた漫画がその後どうなるかも楽しみ。

表紙イラスト

表紙のイラストを見てみよう。上巻は女性、下巻は男性。

男性は主人公だろうがあまりにイメージとチガウ。主人公は硬派でもっとゴツイあるいは小太りな感じを思い浮かべてた~。

軽やかすぎる。遅れたレポートをカフェで書いてる大学生にしか見えない。映像化の時はイケメン俳優がやりますよ~って感じ?

女性は誰だかわからない。こんなフェミニンなムードの女性は登場してない。

男性は漫画をせっせと描いている。幾枚もの原稿から構築される世界は男性のペンから紡ぎ出され、上巻の女性にしっかりとまとわりついている。まるで赤い糸で繋がっているようだ。

男性の漫画や人柄に好意を持ってる女性は一人しかいない。結末はわからないがコレでは表紙でネタバレでは?

見出し

見出しのひとつにも「途中の一歩」がある。それに合わせ見出しには必ず”中”と最後に”ほ”の文字をぶち込んできてる。

全く印象に残ってなかった。語呂合わせに腐心しすぎ。イミとしてはイマイチピンと来ない。

お笑い芸人がシャレを言ってはいちいち説明されてるような感じ。

感想 結 総評(ネタバレあり)

ネタバレあります。まだ読んでない方はご注意ください。

7人の男女の群像劇。等身大の恋愛小説。正直に振る舞ったり、迷ったり、策略をめぐらしたりとリアルに悩みながら進んでゆく。

7人の男女はそれぞれに特長があり、欠点も憎めないキャラとして見事に描き分けられている。

主人公の漫画家は仕事一筋。人生イコール漫画。恋愛に慣れてなくぶっきら棒。それでいて誠実。友人の信頼も厚い。みんなが駆け込み寺のようにやってくる。

前出の制作会社勤務の女性は一人暮らし。多分登場人物はほぼ一人暮らしと思われるが、彼女だけが食事風景が描かれている。ゴハンを一回分ずつ冷凍。忙しくてもぶりの照焼やら野菜炒めを作るタイプの女性。

読者に登場人物への思い入れが深くなるよう巧みに誘導。他の登場人物もユーモアたっぷりに描かれ読者に嫌われる人がいない。

仕事に恋愛に人生に真摯に向き合う姿勢は読者の胸を打つ。登場人物たちのもがきが微笑ましく応援したくなる。

雫井脩介さんの以前読んだミステリ作品は心理描写に長けているのが特長。大きな荷物を抱えてるような登場人物が多く独特な重苦しい雰囲気。読者にそんな負担を一切かけないのが「途中の一歩」だ。

一点の曇もなく晴れ渡った青空のようなラブストーリー。恋愛小説はやはりラブコメ。楽しいのは大歓迎。

少し気になったコト。

・・・まとめすぎ。昔の仲人のオバちゃんじゃないんだから。恋愛の成果が判明したアトも不要。探偵が犯人を暴いたアト、ダラダラ続けてるような冗長感。読者サービスのつもりかな?

上巻の裏面のあらすじで登場人物をナゼ6人と書いてあるのか? 実際は7人なのに。

1人は恋愛にあぶれるから。あぶれた人はカウントしない方針らしい。

う~ん。表紙といいあらすじといいネタバレ忍ばせすぎでは?雫井脩介さんにはカンケーないケド。

最後に。

見出しについてイロイロ申しましたがタイトル「途中の一歩」は秀逸。読者は必ず自分の「途中の一歩」を振り返るだろう。そしてコレからも「途中の一歩」を何度でも踏み出せる人生にしたいと思いを馳せるハズ。人生に未来に希望をもたらす前向きな作品。